開けてはならないバルブを緩めた。
どんなに開けろといわれても、それは決して開けてはならなかった。
ひとたび緩めると、それは堰を切ったようにとめどなく溢れ出して理性も知性も呑み尽くす。
それはヒトをどこまでも弱くする言葉。
だから、もう言わない。「寂しい」なんていう言葉。
寂しい言うから寂しくなる。それは常態の状態。お互いサマのこと。
「寂しい」じゃなくて「寂しかったよ」。
会ってから言う「会えて本当に嬉しいんだよ」の言葉。
しょんぼりでもしんみりでもなく、嬉しさに溢れた笑みを讃えてぽそっと囁く言葉。
もう一度締めよ、そのバルブ。